南フランス・コートダジュールの一角にある港町・アンティーブ。その町の地中海に面した風光明媚な場所にあるピカソ美術館は、かつては古代ギリシャの城砦でした。
司教館を経て、グリマルディ家の居城となり、ピカソがアンティーブを再訪した時には、考古学関連の博物館として利用されていました。
アンティーブのピカソ美術館、彼のアトリエを美術館にしたのは世界でここだけ。 目の前には美しい海が広がり、解放感に満ちた光が室内に反射する。1946年、新しい恋人フランソワーズ・ジローとの同棲を始め、ここで大作「生きる喜び」を描いた。 pic.twitter.com/T8bZ2Ix7pg
— 諸岡浩太郎 (@memento_moreau) 2016年2月14日
アンティーブ近くのホテルに泊まっていたピカソ(picasso)でしたが、部屋に絵の道具を置くとスペースが狭くなってしまうため、博物館の一部をアトリエとして利用しては、という博物館の館長の提案を受けました。
ちなみに、前回アンティーブを訪れた際に、ピカソはグリマルディ城を『アンティーブの夜釣り』という作品の中に描いています。
1946年の9月から11月の間、23枚の絵と44枚のデッサンをこの場所で制作したピカソは、これらの作品を博物館に永久貸与。
そのコレクションをもとに、その後移り住んだヴァロリスで作った陶芸作品も加え、アンティーブのピカソ美術館は、1966年にフランス初のピカソ美術館としてオープンしました。1991年には2番目で最後の妻・ジャクリーヌのコレクションも追加されています。
2008年、アンティーブのピカソ美術館はリニューアルオープンしたのですが、そのタイミングでピカソの作品は、彼が実際に利用していたアトリエの中に展示されるようになりました。
ピカソのアトリエとして実際に使われていた部屋に入れるのは、世界でもここだけだそうです。
愛人・フランソワーズ・ジローとの生活、第二次世界大戦後の開放感、南仏の温暖で光が満ちあふれる環境に影響されたためか、この時代に作られた作品は明るい作品が多いです。
フランソワーズ・ジロー、ピカソを捨てたただひとりの女。アンティーブのピカソ美術館でロバート・キャパが撮影したパラソルの写真を思い出した。ピカソがパリで出逢ったとき、彼女はまだソルボンヌの法科の学生。彼女の絵にマティスの影響を感じた。 pic.twitter.com/vr4EAPWQ5I
— 諸岡浩太郎 (@memento_moreau) 2016年2月14日
この美術館で特に有名なのは『生きる喜び』という作品です。
明るい色彩で、音楽を奏でる笑顔のいきものが描かれたこの絵を見ると、思わず微笑まずにはいられません。
他に、神話をモチーフにした『ユリシーズとセイレーン』、 壁に直接描かれた『アンティーブの鍵』という作品などがあります。
アンティーブのピカソ美術館は、ピカソだけの作品が収められた美術館ではありません。
特に、ロシア出身の亡命画家・ニコラ・ド・スタールによる未完の大作『コンサート』は必見です。
他にも、バルテュス、エルンスト、ピカビアなどの作品が展示された現代アートコーナーも。
地中海を目の前に臨むテラスには、ピカソ作の彫像の他、ミロ作の『海の女神』などの彫刻も置かれています。
館内にはミュージアムショップもあるので、記念のおみやげも忘れずに。